最悪の読後感を残す小説という紹介と、スティーブン・キングが絶賛しているのが気になって購入。
確かに酷い。
舞台は1950年代のアメリカ。第二次世界大戦の傷跡は鮮明に刻み込まれているものの戦勝国としての反映を謳歌しており、また小さな町では全員が顔見知りで家には鍵も掛けずに出かけられた、そんな時代。ノスタルジックに満ちた平和なアメリカの片田舎に住むデイヴィッド少年の隣家に、事故で両親を亡くした美しい姉妹が引っ越してくるところから物語が幕を開ける。
河原での出会い、町に毎年訪れるカーニバルでの思い出。少年少女の淡い青春物語が始まったなと思った矢先、徐々に雲行きが怪しくなり、少女に対する虐待が始まりエスカレートしていく現場に立ち会うことに。結果だけを見れば「異常な事件」だけれど、それが自分と切り離された別世界の出来事ではなく、日常の延長線上にありえることなのだと思い知らされる。
ストーリーも酷いが、構成も最悪。
主人公デイヴィッドは事件に傍観者として立ち会うことになるが、陰惨な虐待の進展に心を痛める一方で、それを心の中で正当化し、またそこに加わりたいという気持ちがあることも自覚する。ふと活字から目を離して我に返ったときに、自分もまた小説を読むことで傍観者として事件に関わっていることに気づき、そこに幾許かの後ろ暗い欲望を自覚するに至って、この物語が嬲っているのは虐待されている少女ではなく自分なのだと気づかされる。
現実でも、事故で命を失いかけるなど、それを体験する前後で世界の見え方がガラリと変わってしまう事というのが稀にあるが、この本も読んだ後には世界の見え方が変わる可能性がある一冊。